減収ほてん債

 報道によれば、地方自治体が赤字決算に陥るのを防ぐため、減収ほてん債赤字地方債として発行できるよう、地方財政法を改正するそうです。

 「減収ほてん債」という地方債は、個別自治体の普通交付税不足を補うための制度です。普通交付税は、基準財政需要額と基準財政収入額の差額分として計算されます。基準財政収入額は、全国一律の方法で計算します。例えば、法人関係税は、前年度の決算額に一定の率を掛けて、全国合計が地方財政計画の見込み額とほぼ同額となるような計算をします。この場合、実際の額と基準財政収入額とが乖離する要因が2つあります。1つは、地域格差であり、もう1つは、地方財政計画の見込み違いです。そこで、これを調整する機能として、精算制度が設けられています。つまり、普通交付税算定の時に見込んだ額と実績額との差額を翌年度以降、ほてんまたは減額する仕組みです。

 ところが、ほてんすべき差額が大きすぎると、その年度において財政運営ができなくなる場合、つまり、赤字に陥ってしまう場合があります。そこで、地方債の発行を認め、その償還金をほてんするという方法が取られています。この地方債を減収ほてん債と呼んでいます。
 
 さて、「財政支援」(12月24日)でご説明したとおり、地方財政法5条で、地方自治体が地方債を発行できるのは、公共施設の整備に限定されており、これは、将来の利用者にも建設費を負担してもらおうという考えですが、地方が30年、国が60年という格差があることも、既にご説明しました。赤字地方債に対して、建設地方債と言います。

 そこで、当然、この減収ほてん債も、公共施設の整備のために使うこと、つまり建設地方債として発行することになります。公共施設の整備については、通常、全ての経費を地方債で賄っているわけではないので、その差額分をこの減収ほてん債で賄うことなります。

 ところが、最近は、どこの自治体も、公共施設の整備など地方債の発行が認められる投資的経費を削減しています。つまり借金を認められても、使い道がないという状態になります。

 地方財政法で使い道を決めているのですから、人件費や社会保障費に借金を充ててもよいという法律改正をすればいいのではないかというのが「減収ほてん債赤字地方債として発行できるようにする」ということです。地方自治体は、借金は赤字の穴埋めに使ってはいけないと法律で定めておきながら、その法律に例外を設けるということです。そうしないと赤字になるというのは、借金そのものは決算上、赤字にはならないということです。赤字決算を打つと大変なことになるからですが、何か変ですね。

 地方自治体の赤字は、実質収支の赤字のことを言います。この点については、改めて考えたいと思います。この法律の国会での審議はどうなるのでしょうか。国税収入の不足による交付税原資の不足問題も含め、補正予算関連事業は、特に心配です。

 ねじれ国会が、地方財政運営に与える影響はとても大きくて、道路財源についても、地方を巻き込んでいますが、地方分権を目指しているのに、こんな実態なのですね。税財源そのものが地方に移譲されていれば、こんなことにはならないはずですが。

 


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