地方公共団体が、特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立て又は定額の資金を運用するために設けられる資金を基金といいます。少しわかりにくい定義ですが、簡単に言うと、貯金のことです。
基金は、財政調整基金と減債基金以外を「特定目的基金」と言います。例えば、文化基金とか福祉基金とか教育基金などは、使い道を決めて、貯金をしていますから、困ったからといって、それ以外の目的に使ってはいけないことになっています。一方、財政調整基金と減債基金については、余裕ができた時に貯金をしておいて、いざという時に使うためのものとされています。
予算単年度の原則というのがありますから、例えば、奨学金のために使ってほしいという寄付金をいただいた時でも、その年度に全てを使ってしまうというのが原則です。これでは、その年に奨学金をもらえる人だけがメリットを受けることになってしまいます。何年かに分けて使う必要がある場合、他に使ってしまわないようにするには、特定目的基金にしておくという方法があるのです。賛同する人が寄付した分も、基金に積み立てれば、長期にわたって継続することもできます。
財政調整基金と減債基金は、財政の健全化を図るための基金ですから、目的がないわけではないのですが、いざという時に備えた基金です。最近は、地方財政が厳しい中で、各地方団体は、過去に積み立てたこの基金を使って財政運営をしていますので、残額は減っている傾向にあります。
減債基金は、借金の返済のためにしか使えませんが、地方財政においては、借金の返済というのは、財政運営において最も大きなウエートを占めます。近年、市場との関連で、毎年償還するのでなく、例えば10年後にまとめて償還するという満期一括償還という起債が増えています。この場合、10年後の償還に備えて、毎年少しずつ貯金しておく必要があります。そのための貯金は、減債基金に積み立てることになります。橋本大阪府知事が心配しているのは、大阪府では、この貯金を使ってしまっていることです。
地方財政法では、決算で黒字が出た場合、その半分は、借金の前倒し返済に当てるか、減債基金に積み立てるかするよう定められています。借金の管理というのは、地方財政運営における最も大きな課題であるとされているわけです。
借金の前倒し返済は、資金さえあればできそうなものですが、特に公的資金と言われる「資金運用部資金、公庫資金、簡保資金」については、なかなか認められず、最近ようやく「公的資金補償金免除繰上償還」という制度が認められたところで、浜松市は、平成19年度から21年度までの3年間で225億円の前倒し返済をしようとしています。
なお、浜松市の平成18年度末の基金の残高総額は257億円で、そのうち財政調整基金は143億円、減債基金は7億円となっています。借金の残高に注意するとともに、基金の残高にも注目してください。